2026 09 27 Sun

病院サイトのウェブアクセシビリティ改善|大学病院での進め方

更新(初出 2024 年 5 月 20 日) by 松崎

制作実績

病院のホームページは、来院する前に読まれるサイトです。

診療時間、休診の案内、担当医、行き方。どれも、読めなかったときの困りかたが大きい情報です。だからこそ、病院サイトはウェブアクセシビリティの優先度が高くなります。

このページでは、奈良県立医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学様の公式サイトで行った改善を例に、病院サイトでの進め方をご説明します。

奈良県立医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学様の公式サイト

奈良県立医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学 、公式サイトのトップページのキャプチャー画像

常にたくさんの方がアクセスされる大学病院のサイトです。誰もが利用しやすいサイトにするため、以前から打ち合わせを重ね、ウェブアクセシビリティの最適化を行ってきました。

作業が完了し、最適化された状態で改めて公開できましたので、ご報告いたします。

病院サイトで、アクセシビリティの優先度が高くなる理由

読み手に、配慮の必要な方が多く含まれる

病院サイトを見にくる方には、体調を崩している方、通院に付き添うご家族、高齢の患者様が含まれます。一般的なサイトより、支援技術を使う方の割合が高くなります。

目の不自由な方は、ご自身の端末に読み上げの設定を持っています。サイト側で文字を大きくしたりコントラストを変えたりするボタンを置くことよりも、その方の設定がそのまま効く作りになっていることのほうが、実際には役に立ちます。

公立大学法人は「行政機関等」にあたる

ここは、病院サイトならではの論点です。

奈良県立医科大学は、2007年4月に法人化された公立大学法人です。公立大学法人は地方独立行政法人であり、障害者差別解消法上の「行政機関等」にあたります。

行政機関等は、合理的配慮の提供が2016年の法施行時から法的義務です。民間事業者が2024年4月に義務化されたのより、8年早い時点からです。

さらにウェブアクセシビリティについては、総務省の「みんなの公共サイト運用ガイドライン」で、JIS X 8341-3:2016のレベルAA準拠が目標水準として示されています。

参考:総務省「みんなの公共サイト運用ガイドライン」

県立・市立の病院、公立大学の附属病院は、同じ考え方になります。医療法人の病院・クリニックは民間事業者ですので水準の位置づけは変わりますが、読み手の事情は同じです。

病院サイトで、実際によく見つかる箇所

診断をすると、病院サイトでは同じところが挙がってきます。多いものを5つ挙げます。

1. 診療時間の表が、画像になっている

曜日と午前/午後のマス目を画像で作っているケースです。読み上げソフトでは、まったく読めません。HTMLの表として組み直します。

2. 休診の案内が、赤い文字だけで示されている

色だけで情報を伝えている状態です。色の判別が難しい方には、ふつうの文字と区別がつきません。「休診」という文字そのものを添えます。

3. 案内がPDFだけで置かれている

初診の流れ、問診票、入院の案内。PDFは、作り方によっては読み上げが通りません。同じ内容をHTMLのページでも用意するのがいちばん確実です。

4. 診療科の一覧が、キーボードで選べない

マウス操作を前提にしたプルダウンやタブは、キーボードだけで操作する方が先に進めなくなります。キーボードで順に移動でき、いまどこにいるかが見える状態にします。

5. リンクの文字が「こちら」になっている

読み上げソフトには、ページ内のリンクだけを拾って読み上げる機能があります。「こちら」が並ぶと、どれがどこへ行くリンクなのか判断できません。リンク文字だけで行き先がわかるように書き換えます。

進め方

STEP 1 何をどうすればいいのかを、先にご説明します

いきなり診断から入りません。何が法的な義務で、何が努力義務なのか。どの水準を目指すのか。ここを揃えてから始めます。院内で稟議を通す際の説明材料にもなります。

STEP 2 診断

ページを選んで、JIS X 8341-3の達成基準に沿って確認します。自動チェックツールで見つかるのは全体の一部ですので、実際にキーボードと読み上げソフトで操作して確認します。

STEP 3 何から直すかをご提案します

見つかった箇所を一覧にして、影響の大きい順に並べます。すべてを一度に直す必要はありません。どこから着手するかを一緒に決めます。

STEP 4 改修

当社で改修まで対応いたします。すでに他社様で制作されたサイトでも、そのままお受けできます。

STEP 5 公開後の定期チェック

ここが、病院サイトではとくに大事になります。

一度最適化しても、お知らせを追加する、担当医の表を更新する、といった日々の運用のなかで、対応できていない箇所は少しずつ増えていきます。

当社では、目の不自由な方に実際に操作していただく定期チェックもお引き受けしています。ツールの点数ではなく、実際に使えるかどうかで見る方法です。

実施の間隔は、サイトの更新量や運用体制に合わせて、ご相談のうえで決めます。最新の仕様に追いつくことよりも、定期的に確認し続けることのほうが、結果として使えるサイトを保てると考えています。

よくあるご質問

全ページを直す必要がありますか

いいえ。まず、来院前に読まれるページ(診療時間・休診案内・診療科・アクセス・お問い合わせ)から着手するのが現実的です。診断の段階で、優先順位をつけてご提案します。

サイトを作り直さないと対応できませんか

いまのサイトのまま改修できる場合がほとんどです。制作会社が当社でなくても構いません。

「準拠」と書いてよいのは、どういう場合ですか

JIS X 8341-3には、試験のやり方と、結果の表示のしかたが定められています。試験を行ったうえで、準拠・一部準拠・配慮のいずれかを、対象範囲とあわせて公開します。試験をせずに「対応しています」とだけ書くと、根拠のない表示になります。

費用はどれくらいかかりますか

ページ数と現状によって変わります。まず診断だけ、というご依頼もお受けしています。ウェブアクセシビリティ診断・改善サービスのページに料金を掲載しています。

どこから相談すればいいかもわかりません

その状態でご相談いただいて大丈夫です。対象のURLが決まっていなくても構いません。何をどうすればよいかのご説明から始めます。

ご相談ください

「対応しなければならないのはわかっているが、どこから手をつければいいのかわからない」「検証を依頼したら高額で、そのままになっている」。病院様から、よくうかがうお話です。

流楽は、創業から23年、500社を超えるお客様のサイトに関わってきました。診断だけのご依頼も、改修まで含めたご依頼も、どちらもお受けしています。

詳しくはウェブアクセシビリティ診断・改善サービスをご覧ください。ウェブアクセシビリティの義務化はどこまで?もあわせてどうぞ。

病院サイト全体の考え方については、病院のホームページ制作|医局・看護部・採用サイトの分け方にまとめています。こちらもあわせてご覧ください。