2026 09 10 Thu

大阪健康安全基盤研究所さま ホームページリニューアルの仕様づくりと事業者選定を支援しました

by 松崎

お知らせ

二つの立場で関わりました

このたび、地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所さまのホームページリニューアル業務において、

  1. リニューアル仕様書・募集要項・評価基準に対する専門的助言と確認
  2. 公募型プロポーザル方式による事業者選定委員会の外部有識者(選定委員)

という二つの立場で、2026年の春から事業者の決定まで携わらせていただきました。

新しいホームページの制作は、これから始まります。
私が関わったのは、その前段にあたる工程です。
「どんなホームページを作るのか」を仕様書として固め、「それを誰に託すのか」を決めるところまで。
制作では見えにくい準備の段階ですが、リニューアルの成否は実のところ、ここでほぼ決まります。

ホームページリニューアルの工程図。01〜03が支援範囲

直せるのは01〜03のあいだだけです。仕様書が固まり契約が結ばれた後は、書かれていないものは作られず、書きすぎたものは費用になって返ってきます。

事業者の選定結果は研究所さまのサイトで公表されています。

大阪健康安全基盤研究所とは

大阪府と大阪市の地方衛生研究所が統合し、2017年に発足した、全国で唯一の地方独立行政法人による地方衛生研究所です。

感染症、食の安全、くすり、生活環境といった分野で検査・研究を行い、腸管出血性大腸菌O157や麻しん、新型コロナウイルス感染症などの健康危機事象に対応してきました。2025年の大阪・関西万博では、大阪府・大阪市・国立感染症研究所と連携し、感染症情報解析センターの運営も担っています。

つまりここのホームページは、住民の生命と健康に直結する情報インフラです。しかも研究所本体のサイトに加えて、感染症の発生動向を発信する「大阪府感染症情報センター」サイトも抱えています。

現行サイトは2017年度のリニューアルから約9年。
情報が分散して目的の情報にたどり着きにくい、古い情報が残っている、といった構造的な課題が積み上がった状態でのリニューアルです。

公的機関のホームページリニューアルに必須の仕様

具体的な中身は案件ごとに違いますが、公的機関のホームページリニューアルの仕様書には、だいたい次のような言葉が並びます。それぞれが何を指しているのかを、発注する側の目線で並べてみます。

JIS X 8341-3 / 適合レベルA・AA
ウェブアクセシビリティ(高齢の方、障がいのある方、さまざまな環境の方が使えること)の日本産業規格です。
公的機関のサイトは対応が事実上の必須で、達成基準をどこに置くか、どう試験して結果をどう公表するかまでを決めておく必要があります。ここを曖昧にすると、公開後に「対応できていない」ことが出てきてしまいます。

CMS機能要件一覧
CMSは、職員の方がHTMLを書かずにページを作成・更新できる仕組みです。
承認フロー、権限管理、テンプレート管理、更新履歴——何ができれば業務が回るのかを一覧化したものが機能要件一覧で、どれを「必須」にしてどれを「推奨」にするかで、導入するCMSも金額も変わります。

データセンター要件・冗長化・稼働率
サイトを置くサーバー環境の条件です。
災害時や高負荷時でも止まらないための多重化(冗長化)、障害時に何時間以内に復旧するのか、といった約束事を指します。健康危機の情報を出す機関にとっては、ここが止まることが最大のリスクになります。

常時SSL化・ウイルス対策・操作ログ・バックアップ
セキュリティ関連の要件です。
通信の暗号化、不正アクセス対策、誰がいつ何を更新したかの記録、そして壊れたときにどこまで戻せるか。「入っているはず」と思い込みやすく、書き漏らすと本当に入っていない領域です。

静的生成/動的生成
ページをあらかじめHTMLファイルとして出力しておくか、アクセスのたびに組み立てるかの違いです。
公的機関では、表示速度と安全性の観点から静的が選ばれることが多く、動的にする場合は攻撃への対策が併せて必要になってきます。

データ移行
既存ページを新サイトへ移す作業です。
リニューアルで最も費用と工数がかかるのがここで、対象ページ数の見積もりがずれると、そのまま金額と工数のずれになります。同時に、移行を機に不要なページを整理できるかどうかが、リニューアルの成否を分けます。

外国語自動翻訳・音声読み上げ・サイト内検索
外部サービス(ASP)を組み込んで実現することが多い機能です。
対象を全ページとするのか一部に限るのか、無償サービスで足りるのか。ここの仕様で、見積が大きく変わってきます。

ライセンス体系
CMSの費用の決まり方です。
ページ数や利用する職員の人数が増えると追加費用が発生する製品もあります。構築時の金額だけを見て決めると、数年後の運用費で苦しむことも考えられます。

Web制作を本業にしていない担当者の方が、この一つひとつについて意味・技術的な妥当性・コストへの跳ね返りを判断するのは、控えめに言っても相当な負担です。
しかも公的機関では、この仕様書がそのまま契約の根拠になります。

「よくわからないまま発注する」本当の怖さ

私は大阪産業局でホームページ診断の専任コンサルタントとして多数のサイトを見てきましたが、公的機関・民間問わず、発注のつまずきはだいたい同じ場所で起きます。

① 書いていないものは、納品されない

「当然やってくれるだろう」は通用しません。
アクセシビリティの達成基準、翻訳や検索の対象範囲、職員研修の回数、マニュアルの形式。書かれていなければ提案にも見積にも入らず、後から「それは追加費用です」となります。特に「どこまでを対象とするか」の一文は、揉めどころの筆頭です。

② 逆に、盛りすぎた仕様は予算を食いつぶす

要件は多ければ良いというものではありません。
過剰な要求は見積を押し上げ、本当に効果のある部分(情報設計やコンテンツ改善)に使える予算を削ってしまいます。「削る」判断こそ専門知識が要ります。

③ 数年後まで含めた総額が見えない

リニューアルの費用は、構築費だけでは終わりません。
サーバーの利用料、保守・障害対応、セキュリティ対策の更新、CMSのライセンス、公開後の改修など、これらが毎年かかり続けます。

ライセンスの考え方は製品によってさまざまで、買い切りのもの、年額のもの、ページ数や利用人数に応じて変わるもの、オープンソースで料金はかからない代わりに保守の比重が大きくなるものなど、どれが良い悪いという話ではありません。問題は、その違いが提案書のどこにも見えないまま金額だけを比べてしまうことです。

構築費が安く見えても運用費で逆転することはありますし、その逆もあります。だからこそ、契約期間の年数を区切って総額で比較できる形を、あらかじめ発注側が用意しておく必要があります。見積の内訳をどこまで書いてもらうか、何年分を提示してもらうか。これを決めておくだけで、数年後の予算の見通しが大きく変わります。

④ 評価基準があいまいだと、選定が「印象」で決まる

プロポーザルは価格だけの入札ではありません。
何を、何点で評価するのかを先に決めておかないと、プレゼンの上手さや資料の見栄えに引っ張られます。逆に基準さえ整っていれば、審査は公平かつ説明可能なものになります。

⑤ 募集要項と様式の食い違いは、事業者を混乱させる

実害が大きい問題です。
募集要項と提案書様式でページ数の上限の記載が食い違う、実績調書に必要な項目の欄がない、といった不整合は、質問対応の増加、提案品質のばらつき、最悪の場合は公募のやり直しにつながります。作り込むほど、書類どうしの整合は崩れやすくなります。第三者が通しで読んで突き合わせる工程を一度挟むだけで、かなりの部分は防げます。

事業者選定までに行ったこと

(1)仕様書案・募集要項に対する助言

ご依頼を受け、研究所さまのご担当者が作成された基本構想および仕様書案に対して、ウェブサイトの構築・デザイン、アクセシビリティ、セキュリティ、情報発信手法の観点から確認と助言を行いました。

  • 発注者として「書いておくべきなのに書かれていない要件」の指摘
  • 逆に、要求水準が過剰でコストに跳ね返る箇所の整理
  • ターゲット(産官学の関係者と、感染症情報を探す一般の方)に応じた情報設計の考え方
  • アクセシビリティの達成基準や、公開後の試験・公表までを含めた記載内容の確認
  • 移行対象の規模やアクセス状況など、事業者が正しく見積れるための前提情報の示し方

(2)募集要項・提出様式の整合性チェック

研究所さまのご担当者が準備された各様式を募集要項と突き合わせ、記載の不一致や不足している項目がないかを確認し、気づいた点をお伝えしました。「事業者が何を書けばいいか迷わない様式」は、そのまま比較可能な提案書につながります。

(3)評価基準の確認

評価基準は研究所さまのご担当者が組み立てられたもので、私は、配点の置き方や評価の観点、段階評価による採点方法といった内容を専門的な視点から確認し、妥当であることをお伝えする立場でした。最終的な評価基準は選定結果PDFで公表されています。

(4)選定委員会への外部有識者としての参画

第1回選定委員会(募集要項・仕様書・評価基準の確定)と、2026年9月3日のプレゼンテーション審査に、外部有識者の選定委員として参加しました。
委員会は研究所内部の3名と外部有識者1名の計4名構成です。

外部の専門家が入る意味は、技術的な妥当性を担保することと、選定プロセスの客観性・公平性を担保することの両方にあると考えています。

ここまでが私の役割です。
この後、選ばれた事業者さんと研究所さまとで、実際のリニューアルが進んでいきます。新しいホームページの公開を、一人の利用者として楽しみにしています。

他の公的機関のみなさまへ

こうした支援は、大阪健康安全基盤研究所さまに限らず、自治体・独立行政法人・公的団体・外郭団体のみなさまに対しても同様にご提供できます。

  • ホームページリニューアルの仕様書・募集要項・提出様式の作成支援およびレビュー
  • プロポーザルの評価基準の確認およびサポート
  • 選定委員会の外部有識者・選定委員としての参画
  • 現行サイトの課題抽出・診断(情報設計、アクセシビリティ、運用体制)
  • 事業者決定後の構築期間中のアドバイザリー

とくに、「発注する前」の段階でご相談いただくのが最も効果的です。
仕様書が固まってしまうと、直せる範囲は一気に狭くなります。予算計上の前後、あるいは「そろそろリニューアルを検討したい」という段階でお声がけいただければ、限られた予算を最も効果の出る場所に配分するお手伝いができます。

ホームページのリニューアルは、多くの担当者にとって「在職中に一度あるかないか」の仕事です。わからないのは当たり前です。
避けたいのは、わからないまま発注してしまうことだけです。

ご相談はお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。